信号精度については、安価な専用機器と比較してもやはり多少劣ります。その要因として、DVDの規格によるものと、実装上の要因によるものが存在します。
規格上の制約
画像の解像度はD1(720×480)で、これはNTSCビデオと互換性があります。サンプリング周波数は13.5MHz(輝度)ですから、帯域はナイキスト周波数の80%として、13.5×0.5×0.8=5.4MHzとなり、NTSC信号には十分な帯域を持っています。ただDVDではYUV4:2:0という方式を採用していますので、色差(色情報)については縦横それぞれ1/2に間引いて記録されています。このうち横については1/2に間引いてもなお、NTSCの色帯域(1.5MHz)を大きく上回っているので問題ありませんが、縦方向にも間引いているため、復元の際フィルタリングにより、縦方向に色のにじみが発生します。例えば、垂直カラーバーの色の境目に中間色が現れます。
量子化ビット数についてはDVDではYUV各8bit(0%〜100%までは約7.8bit)で記録されています(*)。シグナルジェネレータの場合は少なくとも10bit(同期信号と余裕部分を除くと実質9bit)とおもわれます。この場合、自然画で比較すると同等以上と思われますが、テスト信号の場合、輝度、色差別々に評価する必要がありますので、やや劣ることになります。
(*)実際にDVDに記録されているのはYUVデータではなく、DCT係数です。DCT係数のうちDC成分を表す係数は10bitの精度で記録されいますが、当ディスクでは8bit精度のAVIファイルをエンコードしていますので、情報の欠落なしにDCT変換できた場合でも精度は8bitになります。
DVDで採用されているMPEG-2はDCT(離散コサイン変換)という方法で目につき難い細かい部分の情報を省略することによって、情報の不可逆圧縮を行っています。これにより自然画の動画などではかなりの情報の劣化が生じます。ただしテスト信号のような静止画で、かつ平坦な部分が多い画像では、その影響はゼロといわないまでも、かなり少なくなります。
実装上の問題(プレーヤの画質の問題)
DVDプレーヤはアナログチューナーやアナログビデオに比べると、非常に良質な信号を出力しますが、やはり機種による画質の差は存在します。これは使用している回路や部品の違いに由来します。
DVDプレーヤの出力部分は大まかに言うと、MPEGデコーダ→デジタル補間フィルタ→(D/A変換→アナログフィルタ→NTSCエンコーダ)/(デジタルNTSCエンコーダ→D/A変換→アナログフィルタ) という構成です。この中で信号品位にもっとも影響があるのはデジタル補間フィルタです。補間倍率はカタログにも表示されていますが(*)、フィルタのタップ数(ウィンドウ幅)はあまり書かれていないようです。自然画の場合はタップ数を増やしても、画質にあまり差がないため5タップ(補間前で)程度のものが多いようですが、テスト信号の場合はタップ数が多いほど信号品位がよくなります。
(*)倍率が表示されていなくても例えば 「108MHzDAC採用 」と書いてあれば108/13.5=8倍 ということがわかります。プログレッシブ再生で倍速で読み出すことを考慮すれば108/13.5/2=4倍になります。
アナログフィルタについては、補間なしの場合は非常に重要で、コストも高く調整も難しいですが、補間倍率が高い場合は簡略なものでも問題ありません。
D/A変換については補間フィルタのbit数に応じたものであれば問題ないと思われます。
NTSCエンコーダについては、本来のNTSC規格に含まれる、各種帯域制限については、実装していないものがほとんどだと思われます。NTSC規格はAM変調して伝送するため、チャンネル間/音声信号との干渉を防止する必要があるのに対して、民生用プレーヤの出力はその必要はありません。そのため輝度、クロマとも本来のNTSC規格より広帯域になっています。
信号レベル/オフセットについては校正を行ってあればよいのですが、コスト面から安価な機器では省略されていると思われます。この場合、主としてD/A変換器のリファレンス電圧の精度に左右されることになります。
手持ちのDVDプレーヤのいくつかを本ディスクを使用してチェックしてみました→測定例
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